未来の君のために、この恋に終止符を。
泣きたくなるほど、嬉しかった
中学生の頃、言われたことがある。
「実莉はいつも淡々としゃべるから、こわい」
私としては他の人と同じように普通に話しているつもりで、感情表現も十分できていると思っていた。
でも私の気持ちは伝わっておらず、こわいとまで言われてしまう始末。
周りからすれば私の態度は不十分だったんだ。
そんなふうに、人を避ける今の私になる前から、私はずっと人付き合いが下手だった。
今も昔も、どんな時でも、私の本質は変わっていない。
ひとりはさすがにさみしいから、少しの友だちと、家族と、晴樹。
それだけがあればいいと思う。
それさえあれば、私は多くのものは望まない。
それでも、どうしてか大切なものをなにもかも失ってしまう。
うまく大切にできない、そんな私だけど、心から思っている。
守りたいと、優しくしたいと。
その気持ちを形にしたい。
上履きが廊下とこすれて、きゅっと高い音を立てる。
周りのいやな視線を振り払うように駆けて行く。
他のことなんてどうでもいい。
今は、私の頭の中は片岡さんのことばかりで、余計な感情は撥ねつける。
なにがあっても「話が終わるまで待っているよ」と言ってくれた晴樹がいるから、大丈夫だ。
また頼ってしまう自分を情けなく思うけど、どうかその優しさにすがらせて。
「片岡さん!」
まだ何人か生徒の残っている自分の教室に向かって、彼女の名前を呼んだ。
「話が、ある」
震える声を絞り出した。