未来の君のために、この恋に終止符を。
「時間はすべてじゃない。
長くそばにいても付き合えないことはあるし、想った時間で決まるわけじゃない」
「……」
「でも、価値はある」
時間はなにもしなくても、動いて進んで、勝手に前へと行く。
そんなものにすがって、わがままを言って、ばかみたい……ばかみたい。
そう言いながらじゃないとやっていられない。
だけど、甘えてもいい?
価値があると、心の支えにしてもいい?
「過ごした時間、共有する思い出、それらは変わらないものだよ」
晴樹と過ごしたすべての時間に胸を張っても、いいだろうか。
まぶたの裏にちかちかと光が瞬く。
灯された星が眩しくて、あふれそうになる感情は瞳に閉じこめた。
「花沢さんはいつもわたしに数学を教えてくれる」
「それは、約束したから」
「いやな顔をしつつも、なんだかんだでわたしと共に行動してくれる」
「しつこいからね」
「言葉少なだけど心を傾けてくれる」
「そんなことない」
すべて否定で応える私に、片岡さんはそれよりずっとあたたかな肯定をひとつひとつ挙げる。
虹の橋を架けるように、私の心を繋いでくすりと笑った。
「わたし、花沢さんのこと、好きだよ」