未来の君のために、この恋に終止符を。




人と触れあうことはこわい。

誰かを傷つけることも、傷つけられることもこりごり。

いやだとなにもかも撥ねつけていた私は見えない鎧で全身を包みこんでいた。



晴樹だけがいればいいなんて、そんなの違う。

晴樹さえもいなくなればいいなんて、そんなの違う。



全部、本当は、大切なものを大切にしたかった。



美しくはなれないし、どうしようもない私だけど。

受け入れられて、許されること。

好きだと言ってもらえること。



それはこんなにも、こんなにも、泣きたくなるほど嬉しい。



唇を噛んでも表情は揺れる。

ゆっくりと片岡さんに向けた自分の顔は、きっと子どもみたいにぐしゃぐしゃだ。



「ねぇ、花沢さんのこと、実莉って呼んでもいい?」

「……別に、いいよ」

「それじゃあよかったら、わたしのことはめぐみって呼んで」



揺れる視界でもわかるほど、片岡さんは楽しげで、そして少しだけ不安げだ。

それが私をなんだか安心させてくれる。



距離をつめることに怯えているのは私だけじゃない。

片岡さんがどうして私を好きだと言ってくれるのかはわからないけど、こわがりながらも、近づいてくれているんだ。



「……めぐみ」

「うん! なに?」

「……ありがとう」



努力してくれて。

優しくしてくれて。

あなたがいるから、私はとても、恵まれていると思うことができる。



勇気を出して呼んだ名前と、言葉を受けて、彼女は瞳を潤ませてこくこくと頷いた。

狭く暗いこの場所が、彼女の泣き笑いで照らされた。






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