未来の君のために、この恋に終止符を。
「おはよう」
相変わらず表情筋は動かない。
愛想はなくて、冷たくて、だけど昨日までとは違う。
「……めぐみ」
彼女の名前を語尾に足した。
にっこりと頬を緩めて、彼女は私の左隣の席に着く。
その様子を、私たちの間に立っている未来の晴樹は黙って見つめている。
まるで保護者のよう。
視線がなまぬるく感じて、なんだか気恥ずかしい。
そわそわと落ち着かない心境を誤魔化すように目をそらす。
すると、視線の先には現在の晴樹に夏休みの誘いを投げかけている女の子たち……立川さんたちがいた。
「ねー、いいじゃん、遊ぼうって」
「だからみんなでならいいよって」
「やだよ、そんなの。
あたしは晴樹とふたりがいいの!」
甘ったるい声色に、晴樹の腕に触れる女の子らしい指先。
隣に私がいることを知っていながら、……口出しできないことを知っていながら、誘っているんだ。
「デートしようよー」
「それは無理だってば」
「映画? 遊園地? 水族館?
あたしどこでもいいよ!」
必死で断る彼を無視して、無邪気を装った立川さんはぐいぐいと攻めている。
付き合ってもらっている私なんてこわくないということなんだろう。