未来の君のために、この恋に終止符を。
わざとらしく見せつけている立川さんを尻目に顔を背ける。
それが今までの私だった。
だけど、
「……立川さん、だめ」
突然彼女に向かって声を発した私に、周りの人みんながざわめく。
最低限しか話さない私が自分から声をかけたことに驚いているんだ。
でもそこはさすが立川さんとでも言うべきか、目を見開いた状態をすぐに普段どおりに戻して小首を傾げてみせる。
にこにこと笑顔の圧力を感じる。
「だめってどういうこと?
花沢さん、晴樹のことに口を挟めるの?」
想いあう恋人じゃないくせに。
言外にそう告げられて胸がきしきしと崩れてしまいそうになる。
それを震えそうになりながら、こらえる。
「できる」
「えー?」
「だって私、晴樹の……彼女だから」
目はそらさずに、言い切った。
机の下でスカートをぎゅっと握り締める。
しわが寄って、プリーツが乱れることが予想できたけど、そんなことどうだっていいんだ。
私たちの関係は純粋なものではない。
晴樹は私に付き合ってくれているだけで、そこに恋情はない。
これは偽りだらけの恋人。
だけど、それでも、私は晴樹の彼女。
いやいやであろうと晴樹が付き合っているのは、確かにこの私。
立川さんには、この関係に関する言葉は許されておらず、ふたりだけの問題なんだ。