未来の君のために、この恋に終止符を。
悔しそうに唇を噛み締めて、立川さんは私から顔をそらした。
いつも一緒にいる女の子たちを引き連れて、その場から立ち去る背中を見届けた。
無意識につめていた息を吐き出す。
指先をかすかに震わせていると、めぐみは寄り添うように私の背に手を添えて撫でる。
安心して肩の力を抜くと、安藤くんが私をじっと見ていたことに気づいた。
なんだろうと不思議に思っていると、ふっと口元が緩められる。
「そうやって堂々としてるの、いいんじゃね?」
褒められたこと、それから向けられたことのない彼の表情に驚いて、目を丸くする。
以前は周りから散々な言われようで、なにも言い返すことのできなかった私。
晴樹を大切にしている安藤くんに認められたことは純粋に嬉しい。
少しでも変わっているのかと思うと、自然と背筋が伸びた。
「……崇人、実莉のことそういう目で見るのやめて」
「は?」
「いいから」
口元を覆い隠す晴樹だけど、なぜかわずかに赤く染まっている頬や耳がのぞいている。
少しだけ困ったような表情はなんだか可愛らしい。
「実莉が好きになったらどうするつもり?」
晴樹はなにを言っているんだろう。
私が安藤くんを好きになるなんて、そんなはずがない。
嫌いじゃないけど彼はとても私に厳しいし、それになにより私が恋をするのはただひとり。
晴樹だけだというのに。