未来の君のために、この恋に終止符を。
私の肩に手を置いて、めぐみは震えるほど笑っている。
安藤くんが重たいため息を吐き出した。
「花沢の言葉に照れて、俺の表情に妬いて、お前は忙しいな」
呆れたように肩をすくめて「やってらんねぇ」と彼は言葉を落とす。
うるさい、という晴樹の発言は小さく、むっとした顔も怒っているようには見えない。
照れているのも、妬いているのも、私には信じられない。
だけど本当にそうだとしたら、きっと彼は幼馴染としてそう感じているんだろう。
でも、それでもいい。
いつも私の周りに誰かがいるようにとしていた彼は、まるで私から逃れたいようだった。
それが違うとわかっただけで、幼馴染としては想われていることを知られただけで十分だと思う。
私は幸せだと思うよ。
盛り上がっている3人の様子を眺めていると、楽しくて、嬉しくて。
「ふっ」
私は小さく吹き出して、慌てて口元に手を添えた。
「……笑った」
近くで黙っていた未来の晴樹が、囁きより小さな声を空気にとかした。
驚いたように目を見開いて、どう反応したらいいのかと言うように目をそらして、顔をくしゃりと歪めて。
そしてとびっきりの笑顔を浮かべた。
めぐみも、安藤くんも、現在の晴樹も未来の晴樹も、みんな笑っていた。
私も、笑っていた。
今までと違い、勇気を出して大切な人を笑顔にした自分が誇らしく、少しだけ好きだと思った。