未来の君のために、この恋に終止符を。
第4章
薄暗い中、眩しい花
夏期講習が終わって、約1週間が過ぎた今、とうとう8月に入って本格的な夏休みがはじまった。
今月はじめての日曜日の昼過ぎ。
それはいつもと同じようで、今日は少しだけ違う。
自分の部屋から出て、リビングへ向かう。
自分でもわかるほど緊張した面持ちの私を不思議そうに見つめながら、未来の晴樹が後ろをついて来る。
「……お母さん」
ぼんやりとテレビを見ていたお母さんに声をかけると、びくりと肩を跳ねさせたあと、ゆっくりと振り返る。
私の瞳をのぞくように見つめて、どうかしたの? と首を傾げている。
私が自分からお母さんに話しかけるなんて珍しいことで、未来の晴樹は驚いた表情をしている。
だけど彼に気を遣う余裕なんて今の私にはない。
「……浴衣、着つけて欲しい」
そう、今日は年に1度の特別な日。
花火大会の日だ。
毎年義務のように連れ出してくれる晴樹と共に行っていたけど、今年はそこまで憂鬱じゃない。
お母さんに頼んだことが恥ずかしくて、全身から熱があふれるように朱に染まる。
どんな顔をすればいいかわからなくて、結局私はいつもどおりの不機嫌そうな表情。