未来の君のために、この恋に終止符を。
夏期講習の最終日。
放課後めぐみと安藤くんと話していて、その流れで花火大会に4人で行くことになったんだ。
そのために、いつもなら着ない浴衣にも挑戦しようということだ。
私が〝友だち〟という言葉を発し、その存在を持つことは2年ぶり。
予想していなかったんだろう、お母さんの指先は箱の縁をすべる。
かつんと爪が弾かれていた。
「学校は、楽しいの?」
そっとうかがう、かすかな声で尋ねられる。
つい最近まで憂鬱そうに過ごして、日々をこなすだけだった。
そんな私に本当に友だちができたのか、気になる点があるに違いない。
ずっと心配してくれていた、お母さんだから。
「……楽しいよ」
気を許せる人がいることは、大切だと思える人がいることは、毎日を鮮やかに色づけてくれる。
それをお母さんに告げる日が来るなんて。
なんてことない1日の話をするような、自然な様子で話をできる日が来るなんて思ってもみなかった。
……まるで、奇跡みたいだ。
「よかったわね」
そんな言葉を向けられて、和やかな空気に包まれて。
もう2度とないと思っていた時間が帰ってきて嬉しい。
嬉しいと思えることが、嬉しかった。