未来の君のために、この恋に終止符を。




「実莉」



透明な色の声で、自分の名前を呼ばれた。

晴樹と改札を抜けてすぐ、その声の持ち主を探して視線を彷徨わせ、見つけた瞬間頬を綻ばせた。



「こんばんは、めぐみ。私たち遅かった?」

「ううん、大丈夫。待ち合わせ時間前だよ」



崇人もまだだし、と言いながら首を横に振る。

その動作のたびに今日はひとつに束ねられている髪がゆらりと揺れた。



今日のめぐみは白地に桜の飛んだ可愛らしい浴衣を丁寧に着ている。

彼女のエネルギーを感じるような彩り豊かな装いで、とても似合っている。



連絡は取り合っていたとはいえ、夏期講習以来に顔をあわせたことで、緊張する。

だけどそれも、彼女の満面の笑みで吹き飛ぶ。



「浴衣、すごく似合ってるよ」



紺地に赤紫の朝顔の柄の浴衣に、髪飾りをつけた私の姿を見て、めぐみは浴衣にしてよかったよねと嬉しそうだ。



適度な距離を保ったまま、めぐみは私のそばで何度も可愛いという言葉を繰り返してくれる。

可愛いのはめぐみの方だし、私にはそんな言葉似合わないというのに、彼女の優しさが胸を打つ。



「ねぇ、晴樹。実莉、似合ってるよね?」



浴衣は着ず、ジーンズに薄いシャツ姿の晴樹に話を振ることなんてないと思っていたのに、突然のこれだ。

まさか私の姿に対しての意見を求めるなんて、それはずるい。

彼を困らせるに決まってるじゃないか。





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