未来の君のために、この恋に終止符を。
「あーもうっ、崇人タイミング悪い!」
「は?」
「今、せっかくいい雰囲気だったのに」
「そんなの知るか」
めぐみが今にも掴みかかりそうな勢いで安藤くんにつめ寄る。
その様子を見て、なんだか力が抜ける。
「そんなことより、お前らわざわざ浴衣?」
お前ら、と安藤くんが指差したのは私とめぐみだ。
見ればわかるだろうに言葉にするから、めぐみが不思議そうにそれがどうしたの、と尋ねる。
「暑いし動きにくいのに、よくやるな」
「崇人には情緒がなさすぎる」
確かに浴衣についてはそのとおりと言えばそうなんだけど、それにしてもひどい言いようだ。
安藤くんらしいけど、思わずため息をこぼし、はたと気づく。
もしかして、晴樹も同じように思っているんだろうか。
この格好じゃはやく歩けないし、気を遣うことが増えると。
まさか、とは思うけど彼は優しいから言葉にしないだけだとしたら。
それは少し、さみしいなと思う。
張り切ってみたりなんかして、私ばかみたいだ。
言いかけていた晴樹の言葉を聞き逃したこと、聞かなくてよかったと思いつつも落ちんでしまう自分のこと。
それらに意識が向いて、頭が働かない。
ぼんやりとしたまま晴樹の方に視線を動かすも、私の様子に気づかないまま。
恥ずかしそうに肩をすくめて「全員そろったし行こうか」とふたりにも声をかけた。