未来の君のために、この恋に終止符を。
今は、昔じゃなくて
中学の頃から使っているせいで塗装が剥げてしまった白のシャーペンの芯が、ノートと擦れてカリカリと小さな音を立てる。
頭の中で問題を巡らせて、ほんの少しだけ手をとめた。
それでもなお、とまることなく擦れる音は私の正面から────晴樹の方から聞こえてくる。
気づかれない程度に顔を上げてみれば、視界の邪魔にならない、彼らしいさっぱりとした髪型のおかげで真剣な瞳がよく見える。
ノートに向かって伸びたまつげはきっと、私よりずっと長い。
黙々と数学を解いて問題集を消化していく様子は、流れ作業のごとくなめらかだ。
今日は土曜日。
期末試験が直前に迫っているということもあり、私たちは、私の部屋でふたり勉強をしていた。
過ごし慣れた自分の部屋に晴樹が顔を出すことは珍しいことじゃない。
というか日によってはわざわざ私を起こしに来るくらいだし、違和感なんてまったく感じない。
それほどに彼は私と同じ空間に馴染んでいるんだ。
中高生ともなれば思春期に入り、幼馴染とはいえど部屋には来なくなったりと距離が開くはずなのに、そんな時は一瞬たりともなかった。
今では一応恋人だし、それはおかしなことではないけれど。
だけど、本来ならあったはずのものがないということは、言葉にするには少し複雑な心境になる。
遠い存在にならなくてよかったと、だけどおかしなことなんだろうと、安心しつつもじりじりと焦るような、そんな心境に。