未来の君のために、この恋に終止符を。
戻れない日々に思いを馳せていて、私は周りに意識が向いていなかったらしい。
「そろそろ移動するぞ」と安藤くんに短く声をかけられ、あとを追おうとした直後にかき氷をこぼしてしまった。
「あ……」
べしゃりと情けない音を立てて落ちた黄色い氷の山。
あっという間に溶けて、じわじわと広がり、アスファルトに染みていく。
あまりにも呆気ない様子に動揺してしまう。
「大丈夫?」
前を歩いていたはずの晴樹は、すぐさま気がついてわたしのそばに駆け寄ってくれる。
浴衣が濡れていないかと確認し、汚れていないとわかって頬を緩めた。
「汚れなくてよかった。
せっかく……似合ってるんだし、ね」
少しためらいがちにそう小さく呟いて、晴樹は私の目をしっかりと見つめて笑った。
ああ、なんだ。
浴衣姿の私を煩わしく思っているんじゃないか、なんて勘違いだったんだ。
だって、言葉が、仕草が、態度が。
うそじゃないとわかる。
恥ずかしそうな表情は可愛くて、胸がぎゅっと握り締められたように息が苦しい。
こんなにも苦しくて、苦しくて、それなのに幸せだなんて、変な気分だ。