未来の君のために、この恋に終止符を。
そんなふうに話しているうちに、晴樹が軽く走って戻って来た。
そして「はい」と私に笑って自分のかき氷を回収して、その手に棒を持たせる。
「……りんごあめ?」
それは、真っ赤なあめで包まれて、艶めいているりんごあめだ。
「実莉、好きだよね?
かき氷はほとんどなくなっちゃったから、それでも食べたらいいよ」
ここは人の流れから少しそれているけど、晴樹が通ってきたのは人が多いところ。
熱気の中に飛びこむようなもので、しっかりした首筋には汗がにじんでいた。
「……ありがとう」
私のために必死な晴樹の姿は切なくて、でも大切にされていることは嬉しい。
複雑な心境のまま、喜びだけを噛み締める。
晴樹が満足げなんだから、きっとこれでいいんだ。
「晴樹も戻って来たんだし、実莉は手でも繋いでもらったら?
そうしたらさっきみたいに慌てることも、ひとりで晴樹がいなくなることもないと思うし」
冷やかすトーンのままのめぐみの言葉に動きをとめて、少しだけ目をふせた。
それができたらいいと思うけど、恋人らしいそれに憧れる心があるのは誤魔化しようがないけど、でも。
「それは、いいよ」