未来の君のために、この恋に終止符を。
耳を押さえそうになるほど、大きな音がする。
目の前で弾けて、それは空中に広がり落ちていく。
繰り返し行われるその動きは闇の中に色とりどりの絵の具を散らせ、美しい。
「綺麗……」
毎年晴樹の隣で見てきたはずの花火が、なぜか今まで見たことがないと思うほど華やかで、目を奪われる。
これは、こんなにも、綺麗だったんだろうか。
……きっと違う。
いつもみたいにただの義務としてでなく、めぐみと安藤くんもいて、言葉の応酬はしっかりできていたから。
隣にいるのにひとりきりだと感じることがなかったから。
だから今はこんなにも、光がいくつも降ってくるのを、幸せな気持ちで受けとめていられるんだ。
心はとても静かに熱を持つ。
だけど心地いいその感覚に揺れていた、その時。
「っ、」
晴樹の手が私のものに触れた。
指を1本1本絡めあう、いわば恋人繋ぎではない。
子どもの頃と同じように緩く重なった。
「今は、塞がってないから」
私の耳元に、風が泳ぐように言葉が流しこまれる。
めぐみも、安藤くんも、気づいていない。
私と晴樹だけが知っている、掌に伝わる温度に心が震える。
どうして晴樹が私と手を繋いでいるのか、その理由はなんなんだろう。
彼の気持ちは私が2年間変わらなかった態度を変えてみても、やっぱりわからないと思う。
だけど、ただ、晴樹と触れあっているという事実に、花火の音をかき消すほど胸が騒いでいた。