未来の君のために、この恋に終止符を。
真っ白のカーテンに、丸いふたつのクッション。
仮にも女の部屋とは思えないほどシンプルで、色味がなくて、殺風景な私の部屋。
簡易式の机はベッドを背もたれ代わりにしている。
いつも通りのはずのこの部屋には、今、異質な存在がひとつある。
動きをとめたままの私に気づいた晴樹が視線をあげる。
私にその澄んだ瞳を向けて、かすかに首を傾げた。
どうかした?
その声は、ふたつだ。
重なって聞こえて、私は不自然なほど肩を跳ねあげた。
「実莉? 疲れた?
そろそろ休憩でも入れようか」
そうやって、目の前の晴樹が私に対して気を遣ってくれる。
だけどそうじゃない。
ある意味疲れているからこんなとんでもない状況に陥っているのかもしれないけど、それが理由で集中力が切れたわけではない。
ふるふると首を横に振る。
毛先がなにかに触れることはなく、静かに揺れた。
「平気」
続きをしようと口にすれば、晴樹はわかったと頷くだけ。
いつもなら休憩を入れるタイミングでもないし、彼がこの程度の勉強量で疲れるはずもない。
晴樹は私なんかよりずっと頭がいいんだ。
昔はばかだと思っていたけど、それはただ机に向かっていなかっただけらしい。
成長して真面目に勉強するようになった彼は、私では追いつけない頭を持っている。
だから彼はいつも試験前には私と勉強して、私がわからないところを教えてくれる。
今も私の手がとまっていることに気づいたから、わからないところでもあった? と顔をのぞかせている。