未来の君のために、この恋に終止符を。
『今、電話しても大丈夫?』
「うん」
わざわざ確認してくれる彼女に向かって、電話越しに頷いた。
熱を持った頬を手で扇ぐ。
『晴樹は?』
「遊びに行った」
短く答えて、ベッドの上の彼を見る。
未来の晴樹なら、目の前で顔を両手で覆っているけど、彼女の言う晴樹とは違う。
『それなら今日の方が晴樹からすれば嬉しかったのかな』
私に聞かせるつもりじゃない言葉なんだろう。
色が薄く、いつもより早口だ。
「どういうこと?」
『今度暇な日があったら、図書館で夏休みの課題しない?
たまには女ふたりで!』
予想していなかった言葉に、瞳を瞬いた。
「……ふたりで」
ばかみたいにめぐみの言葉を繰り返した。
拍子抜けした声は、すとんと部屋に落ちる。
『晴樹もいいけど、わたしは実莉ともっとちゃんと仲よくなりたいから』
彼女の、この気持ちがいいほどはっきり言うところがとても好きだと思う。
正直になんでも言って、だけど安藤くんほどきつい物言いじゃない。
彼女らしい優しさを感じて、ホットミルクを差し出されているみたいだ。
「……うん。行く」
『本当? 嬉しい!』
まるで普通の女子高生みたい。
女友だちとの約束に私は人知れずはしゃいでいた。
心が弾むことは、どこか恋に似ていた。