未来の君のために、この恋に終止符を。
「今より先の晴樹がどうしていたのかは知らないけど、少なくとも今までは」
「そうだよ。
俺は実莉に友だちができればいいと思っていた」
やっぱり、と心の中で口にする。
一房落ちた髪をそのままに、唇を動かした。
「それって、そういうことだったんだよね」
曖昧な言葉。
はっきりとした意味を持たず、理解できない人の方が多いだろう。
だけど、晴樹には、わかると思った。
手放した幸せを取り戻して欲しいという、彼の優しさで間違いないかという問いかけだと。
こちらに顔を向けていた晴樹は仰向けになるよう転がった。
音もなく、シーツがずれることもなく、ただ少し離れたところにいる私のところまでは届かないほどの風だけを起こして。
天井を視界に映していた晴樹がわずかに顔を動かして、私を見た。
目と目があうだけで、空気は変わる。
「────うん」
泣いているみたいな声で、心底嬉しそうだった。
眩しい……まるで触れてはいけない、触れられない太陽のよう。
それでいてあどけない表情で、私を翻弄する。
だけど、それもいい。
相手は晴樹だから、私に悪いようにはしないとわかっているし、心が震えることはとても幸せだから。