未来の君のために、この恋に終止符を。
眩しそうに目を細める現在の晴樹を視界に捉える。
そんな瞳を向けられる理由がないんだけどな、と思いつつもあんまりゆっくりしているとめぐみを待たせてしまうだろう。
彼女はなにごともはやめに行動するタイプだ。
「じゃあ」
ひらひらと手を振って、玄関の扉をくぐり抜けた。
外に出ると、その瞬間に世界が変わったみたいだ。
目を開けていられないほど光を発する太陽に、息をするだけで汗がにじむようなあつさ。
セミの音もすぐそばで重なっていて、夏は命を失ったものでもなんでも存在が多くて騒がしい。
ぐっと汗をぬぐい、駅までの道のりを歩きはじめた。
その隣には嬉しそうにしている晴樹がいる。
「なんでそんなににこにこしてるわけ?」
自分の部屋で話すのとは違い、外には人の目がある。
かすかな声で、口を小さく開けて問いかけた。
「嬉しいんだよ」
「それは見ていればわかる。なにが理由?」
「実莉が片岡と勉強するために、外に出たから」
引きこもりじゃあるまいし、外出だけでこんなに喜ばれることはないと思うんだけど。
学校がある間はちゃんと朝から出ているし、デートだなんだと連れ出しているのは晴樹じゃないか。
そもそも晴樹は私に関することに心を揺らし過ぎている。
こんな小さなことで喜ばれると気まずいものがあるんだけどな。