未来の君のために、この恋に終止符を。
記憶を辿るようにして、ゆっくりと晴樹が挙げていく変化。
それは未来の晴樹が私の元に訪れてからだから、わずか1ヶ月半の間のことだ。
短いようで長い期間で、私にとってどれも思い出深いことばかりでさみしくなる。
未来の晴樹にとって過去の私は、さみしい生き方をしているようだ。
気分は沈みそうになるけど、それでもひとつ収穫がある。
今まで話を聞く限り、未来の出来事を変えても大きな不都合はないみたい。
だって未来の晴樹に影響があるなら、彼だって少しは気にするだろうし。
なんの問題もないのなら、今後もあるだろう不幸な出来事は変えていいんだ。
少しでも今をいいものにするために、現在の晴樹との未来をつくっていくことは素直にいいなと思う。
姿勢を元に戻して、晴樹は小さく言葉を落とす。
「今の実莉は、俺の知らない実莉だ」
「え?」
「知らないって言っても、昔の実莉に戻りつつあるっていうのが近いのかな。
でもとにかく、俺が15の時の実莉と22で会いに来た実莉では、大きく違う」
確かに、自分でも思う。
この2年間で生まれた、大嫌いな私は、少しずつ変わっていっている。
殻に閉じこもっていた私は、ようやくそれにひびを入れて、わたしの空間に光を受け入れる勇気を出したんだ。
「実莉を見ていて、人との関わりは未来を変えるんだなって思ったよ」
その言葉を身に染みこませるように、口の中で転がした。
人との関わりは未来を変える。
それはなんて、素敵なことだろう。