未来の君のために、この恋に終止符を。
いる君と、いない君
ベッドに寝転がった状態で夏休み課題の一部、英単語帳を睨みつける。
ずらりと並べられた英単語に、その意味。
赤と黒が敷きつめられたそれは、高校生になってずいぶんと分厚いものになった。
毎週小テストがあったせいで、夏休みの今ではすでに端の方が曲がっている。
暗記するものは、はやいうちからこつこつとやるべきだ。
休み明けには確認テストがあるんだからと思いつつも、なんだか今日は集中できない。
顔の上に開いたままの単語帳を乗せる。
鼻を紙の香りが滑った。
「疲れた?」
ベッドの隅にいたはずの晴樹の声がやけに近く聞こえて、びくりと肩が跳ねた。
実体がなければ気配もない彼は、目で捉えていないと動きがよくわからず驚いてしまう。
ずるりと単語帳をずらし、目だけをのぞかせた。
わたしの様子をうかがう彼と目があう。
「ちょっとね」
「じゃあ単語帳置いて、休憩しなよ。
下から飲みものは持って来てあげられないけど」
なにも触れられない自分の状態を冗談にして、晴樹が小さく笑ってみせる。
その様子を見上げて、その整った顔立ちの瞳に視線をあわせた。