未来の君のために、この恋に終止符を。




とはいえ未来から来たと言われても、そんな言葉は嘘にしか聞こえず確証なんてない。

だからその言葉を鵜呑みにしているわけではないし、正直今でも半信半疑だけど、とりあえず私以外の人には見えないというのは本当らしい。



なんとか一晩やり過ごして日が再び登った今日だって、未来の晴樹は現在の晴樹が部屋に来る前からここにいる。

その間に彼は、朝ごはんを食べにリビングに向かう私について来て、お母さんの前にだって立ったはずなのに視界には映っていなかった。



起きればいなくなると信じて目を閉じた昨晩の私は、常に感じる気配に眠りにつくことが出来ずにいたけど、夜中には気配がなくなりうつらうつらと夢の中に誘われた。

それなのに朝方まぶたを持ち上げると、そこには朝日を受けている彼がいて。

しかも、「昨日は私があまりにも気にしていたから部屋を出ていただけだ」と言われてしまった。



そんなショックを受ける、かつ脱力するしかない発言をする男。

危険視する必要は感じないような存在だとはいえ、そんな異常事態で平気なふりを続けられるはずもなく。

私は彼が気になって仕方がなく、落ち着いて勉強なんてできずにいた。



なんとか数式を読みこもうとしても、さらりと撫でるようにして弾けて消える。

シャボン玉のようなそれが浮かんだ先は、何度も頭の中で繰り返した昨日のこと。

未来の晴樹が私に、私たちを別れさせるために来たと言ったあとのことだ。






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