未来の君のために、この恋に終止符を。
目を見開いて、声をもらすこともできない。
息は、時は、とまった。
だけど、
「はる、き……?」
トラックが通り過ぎたその場所には、さっきまでとなにも変わらない様子の彼がいた。
驚いた顔をしている私を見て、晴樹はふっと息を吐き出す仕草をした。
現実に理解が追いつかず、なんで……と声をもらした。
「怪我はない?」
「うん……」
「よかった……」
ほっとした顔はまるで傷ついたように儚い。
整った顔立ちがくしゃりと歪められると、それだけで驚いてしまう。
「助けられて、よかった」
その言葉にはあまりにも深く想いがこめられているように見える。
まぶたを下ろして、たとえその頬は濡れていたとしてもおかしくない。
「晴樹も平気なんだね……」
かすれた声がのどをすべる。
するりと抜けるようで、なにかに引っかかるよう。
いつもとなんら変わりない彼の姿を視線を這わすようにして確認した。
柔らかそうな髪も、大人っぽくなった顔立ちも、二重の濡れた瞳も、光に透ける身体も、普段どおりだ。
「実莉ってばなんて顔してるの?
俺はなににも触れられないんだから、轢かれたりなんてしないよ」