未来の君のために、この恋に終止符を。




そう言われれば、そうだ。

晴樹は私以外のものはなんでもすり抜けることができて、その代わりに触れることはできない。

さっき私の背を押した風はきっと、晴樹だったんだ。



その事実に納得したけど、とっさにそのことに気づかなかった私は晴樹が事故に遭ったと思い驚いてしまった。

だけど少し冷静になり、安堵の息をもらす。



そうして、はたと気づいてしまった。

今まで深く考えてこなかった、未来の晴樹の状況のことを。



事故に巻きこまれなかったのは、実体がないから。

私だけが見えて、触れられて、でもそれは本来ならありえないはず。

なんだってすり抜けて、私がいない時は扉だってそのままするりと通っていく。



それはまるで、まるで……。



続きの言葉は頭に浮かぶより先に自分でかき消した。

それは信じられないことだし、信じたくなんてないことだ。



だけど1度気になりはじめると、今まで気にしていなかった点に注目してしまう。



未来の晴樹は現在に来てくれてから、基本的にいつも彼は私のそばにいる。

学校や昨日の図書館のようにいない時ももちろんあるけど、やっぱりそうは言っても確実じゃない。

今も、目の前に彼はいる。



そうやってここに今、晴樹がいるというのなら。

それなら、未来で未来の晴樹はどうなっているんだろうか。






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