未来の君のために、この恋に終止符を。
ごくり、と唾を飲みこんだ。
いやなことに意識がいってしまって、そんなこと考えたくなかったと思う。
だけど今、私の頭の中はそのことに対する疑問でいっぱいだ。
もう、放っておくことはできない。
「ねぇ、……晴樹」
震える声を絞り出した。
ん? と応える晴樹はなにも間違った行動はしていないというのに、どうして無視してくれないのだろうと見当違いにも苛立ってしまう。
「未来の晴樹は、未来ではなにをしているの」
「仕事のこと?」
「違う。……本当はわかっているでしょ」
誤魔化そうとする彼の言葉を叩き切って、本当の話を促した。
「現在に来た未来の晴樹は、未来ではどういう状態?」
はっきりと問いかけられた彼は眉を下げて、重たいため息でふたりの空気を包みこんだ。
道路に座りこんだままで、トラックが通った場所からという微妙な距離感は保たれている。
それなのに彼の声はいやになるくらい、よく聞こえた。
「いないよ」
私みたいに短い言葉ではっきりと告げられる。
まさかね、と言うように息を吐き出して、吸いこむことができない。
感情のわからない、淡々とした表情は美しいけどおそろしい。
なにもかもを受け入れて、静かに彼は言葉を紡いだ。
「未来で俺は死んだから、今、ここにいる」
────ああ、どうか、うそだと言って。