未来の君のために、この恋に終止符を。




休憩時間にも質問に来る真面目な生徒もいれば、可能な限りさぼろうとしている生徒もいる。

質問には丁寧に対応しつつ、課題をしない生徒や授業に遅刻もしくは無断欠席する生徒にも個別で声をかける必要がある。



勉強する気のないやつに構う余裕なんてない、と言う講師もいるが、なんとかしてあげたいと俺は話をする時間を設けてしまう。

それでまた、時間は減ってしまうんだけど。



保護者の方と面談をして、授業終わりには課題を出して、毎回小テストをして、それらの正答率を見たらたまには補講もして。

試験前には試験対策、模試前には模試対策、受験生には受験対策。



お世辞にも暇とは言えない仕事で。

学生のうちから塾講師のバイトはしていたけど、今ほど授業数は多くないし、正式に講師として就職するとやることは圧倒的に増える。



そのせいで彼女────春から事務職に就いている実莉のそばにいられなくなるなんて、避けたいことだったんだけど、そうかんたんにはいかない。



スマホを耳と肩で挟んで、鞄から定期入れを取り出す。

改札を通り抜けて、ホームへと足を進めた。



この駅ではないけど、学生の時はふたりで毎日一緒に登校していたなと思い出し、少し懐かしく思う。






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