未来の君のために、この恋に終止符を。




降りてきた人と入れ替わるように、電車内に立ち、窓から外を眺める。

なめらかに動き出した景色はあっという間に届かないところへ流れた。



中学生の時から、俺と実莉は気持ちが噛みあわなくなった。

ずれるようになって、近くにいながら遠くて。

笑っていて欲しいのに、彼女の笑顔を殺したのは俺なんだ。



なにに対しても希望を見出せずにいる彼女がなにかを楽しむ姿をもうずっと見ていない。

感情表現が得意でなかったけど、それでも嬉しそう、喜んでいる、悲しんでいる、と長い付き合いの俺にはわかっていたのに。

実莉の心が震えないから、俺にも伝わらない。



幸せそうな顔が見たいと思うのに、俺にはそんな顔をさせてあげられないんだ。



そして最近、就職してからは共に過ごす時間も減ってしまった。

実家暮らしをやめてしまったせいで、彼女を起こしに行くこともない。

大学生になってからは授業の時間割によってはできなかったけど、それでも完全に途絶えることはなかったのに。



互いに仕事もあるし、この年になってもキスひとつしたことのない関係の俺らは泊まることなんてそうそうない。

だからしてやれることが思いつかない。



俺は、大切な人にどうすればいいか。

もうずっと、わからないんだ。






< 177 / 214 >

この作品をシェア

pagetop