未来の君のために、この恋に終止符を。
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「過去の俺と君を、別れさせるために来たんだ」
私はあまりにも衝撃的な言葉に声を失って、しばらくまばたきだけを繰り返した。
ぱちぱちと視界を何度切り替えても、目の前の男は黙っているし、発言を取り消す様子もない。
なんとか言葉の意味を理解して、ようやく私は息を呑んだ。
その場の雰囲気に流されていた気持ちを引き寄せるように1歩後ずさる。
「別れる、なんて、なに言ってるの……?」
身を庇うように、自分で自分を抱き締めるように、腕を組む。
ぎゅっと力が入って動揺のあまり息苦しさを感じる。
聞くことはないだろうと思っていた、晴樹からの────晴樹と名乗る人からの別れの言葉。
私のせいで始まった関係は晴樹には終わらせられないと、そう信じていたのに。
私にも終わらせられないからと、どこか安心していたのに。
突然すぎるうえに、さらに自然に紡がれた言葉が私の胸を握りつぶすような痛みを与えた。
掌からこぼれていくのは、歪んだ、醜い心。
私の、心。
それに私は、手を伸ばした。
「いやだ。別れない」
「実莉?」
「……別れたくなんかない」
視線を下げてしまいたいのに、逃げてしまいたいのに、どうしてだろう。
できそうにない。
「なんで?
別れた方が実莉も気が楽なんじゃないの?」
「そんなふうに晴樹が考えてしまうのもわからなくはないけど、……違う。そんなこと思ってない」
ふるふると力なく、首を横に振る。