未来の君のために、この恋に終止符を。
呆然としたまま、動きは固まってしまった。
のどが渇いて、なにかが張りつくような感覚に襲われる。
自分の呼吸がうるさくて、気分が悪くなってきた。
まさか、と思う俺を裏切って、
「まぁ、機会があれば」
実莉はそう応えた。
今までの実莉ならありえない言葉に、俺は耳を疑った。
俺の友だちや、高校時代の委員長など、実莉に声をかける人は何人かいたのに。
なのに誰とも親しくなろうとしなかった彼女が食事に行ってもいいと思うような相手がいるなんて。
大人になって、断ることができないという理由だったらいい。
だけど、もしも好きだからなんて理由だったなら。
……無理だ。
受け入れることなんて不可能だよ。
俺以外の男と付き合って、笑う実莉なんて、応援できない。
ケトルが俺の代わりに悲鳴をあげるように、高い音を立てた。
無意識に火をとめているうちに、寝室から出てきた実莉はキッチンに顔を出す。
「あとは私がする」
呆然とする俺には気づくことなく、実莉はカップや茶葉を棚から取り出した。
真っ白の食器から、かちゃんと小さな音がする。
「ねぇ、実莉」
必死で冷静さをよそおって、なのにそれでも隠せないほど震える声で彼女の名前を呼んだ。
なに? と短く応える実莉は俺を見ようとはしない。
それでも構わないと質問を投げかける。
「さっきの電話の相手は誰?」
「会社の同僚」