未来の君のために、この恋に終止符を。




もしも、俺がさっきの会話を聞いていなかったらその言葉をそのまま受け入れられたのかな。

ぼんやりとそう思うけど、もう遅い。

俺は実莉の言葉を、反応を、胸に刻みつけてしまった。



誰かと親しくなって欲しい、人と関わることをおそれないで欲しいと思っていたはずなのに。

それが実際に起こればこんなふうに嫉妬して、許せなくて、好き勝手言って、……ばかだなぁ俺。



そんなんだから、俺は実莉を傷つけるばかりなんだね。



そう後悔していることはうそじゃないのに、それでも俺は自分の中を駆け巡る感情を持て余して、うまく処理することができない。

あふれるものをそのままに、すべて吐き出す。



「実莉は彼氏が部屋にいるのに、他の男性と食事の約束をするんだね」



え? と困惑する実莉の声がする。

同じように自分でも内心うろたえてしまう。



「実莉は俺がどんな気持ちでここで聞いていたか、わかってない」



そんな言葉を向けられて、ようやく俺の方を向いた彼女の瞳は濡れて陰っている。

唇をきつく噛み締めて、血が出そうな様子に胸が軋んだ。



「……晴樹が、それを言うの?」



俺を見上げる彼女が言ったとは思えないほどかすかで、儚くとけてしまいそうな声。

わずかに動いた唇についた歯の痕が痛々しい。






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