未来の君のために、この恋に終止符を。
少しの間ののちに、俺は実莉を追いはじめた。
マンションを出たところで周りを見渡すけど、どこにも彼女の姿がない。
衝動のままに、彼女を探して走る。
俺がばかみたいにへらへらと笑っている間も実莉は傷ついていて、それなのにそんなところを見せずにいた。
俺のわがままに振り回されて、こんな俺を好きになってくれる人との間に挟まれて。
幼馴染だからと受け入れてくれる実莉に甘えていた。
そうして俺は今、また実莉を傷つけて、あんな言葉を吐かせた。
すべて俺のせい。
俺が原因で、実莉は苦しんでいる。
いつまで経っても成長しない俺にきっと嫌気がさして逃げ出したんだ。
そう思うのに、わかっているのに、追うことをやめられない。
見つけて、捕まえて、どうする気なのか。
そんなこともはっきりしないで、実莉だけじゃなく彼女に向ける言葉も探していた。
だけどそれが見つかるよりはやく、実莉の背中を見つけた。
ほっと心がほどけるような感覚に覆われ、彼女までもう少しという距離で俺が近くにいることに気づかれた。
慌てた彼女が道路に出てしまい、迫り来る車を呆然と見る。
そんな背中に向かって、俺は叫んだ。
「実莉!」
思いっきり腕を引いて、包みこんで庇う俺の目の前には、赤い車があった。
重く響く、音がした。