未来の君のために、この恋に終止符を。
ふわふわと、ゆらゆらと、ぼやけて戻りそうにない意識の中で、実莉の姿が頭に浮かんだ。
幼い頃の笑顔、怒った顔、拗ねた顔。
さっきの涙に濡れた頬、見えなくなってしまった彼女。
9年も訴えるように向けられていた、無表情。
……ああ、そうか。
今、ようやく気づいた。
君の表情はきっと、哀しみを隠すために無を描いているんだね。
実莉を守り、それでいてひとりぼっちにしてしまうそれは、きっと俺のための優しさだった。
こんなにもずっとそばにいたのに、気づかなかった俺はどうしようもないばかだ。
ばかだったのに、俺の彼女になってくれて、……嬉しかった。
もしもやり直せるのなら、すべては実莉のために。
俺は実莉を泣かせない未来にする。
必ず俺は、未来の君のために、この恋に終止符を打つよ。
そう考えていた俺は、まぶたをゆっくりとあげた。
すると、そこは実莉の────7年前の、15歳の彼女の部屋だった。