未来の君のために、この恋に終止符を。
「それが、俺が15歳の実莉の前に訪れる前の出来事のすべて」
ベッドで隣に腰かけていた晴樹は重たい、ため息のようで少し違う息を吐き出した。
それはまるで、彼自身を絡み取る細い糸のようだ。
すぐそばで笑うでも歪めるでもなく、色のない表情を浮かべる晴樹。
彼が今でもどうだったかわからないでいると言った、未来の私が電話の相手に対して向けていた感情。
それは私には、わかる。
晴樹が懸念している、なにかの間違いで好意に似た感情を向けられていたとしても、私にとってはただの仕事仲間。
それだけで、なにも変わらない。
私が好きなのは、なにがあっても晴樹だけなんだ。
でも、彼は気づかない。
他の誰かが勘づくことがあっても、晴樹だけはそんなこと考えもしないから。
付き合っていながら、私をそういう対象として見ていないから。
「俺は、22歳で死ぬ。
そうわかっている俺とは、別れた方がいいよ」
まっすぐな瞳だった。
死をおそれず、澄んでいながら死んでいた。
……ああ、そうだ。
目の前で話し、笑い、泣きそうに言葉を紡ぐ彼は。
私の好きな人は、現在にも未来にも、もうどこにもいないんだ。
話をずっと聞いていたくせに、そんなふうに今さら現実を突きつけられたかのように胸が深く痛む。
それに耐えられず、視線は下へと下がった。