未来の君のために、この恋に終止符を。
気が楽だなんて、私からしてみればありえないけど、そう思われていたっておかしなことではない。
それほどまでに私の態度はいつだって冷たいし、もう長い間誰かに笑みを向けたことはない。
だけど。
「俺のこと、好きじゃないのに?」
心底不思議そうな反応をされてしまう。
それに苛立つような、泣きそうになってしまうような、自分でもよくわからない気持ちで胸がいっぱいになった。
「好きだよ」
耳から入った自分の声に、自分の言葉に、目の前の彼と同じように驚いてしまう。
口元を隠して、顔を背けた。
だけどその感情が意識する間もなく、口からこぼれ落ちたことに自分の気持ちを再確認した。
好き。
私は、今でもまだ、晴樹が好きなんだ。
それはずっと、歪んだ関係になっても、物心ついた頃から変わっていなかった。
「それは、予想外だったな……」
気の抜けるような言葉にきっと彼を睨みつけると、
「っ、」
彼はくしゃりと、泣き出しそうな子どものように表情を歪めていた。
それは一瞬で、彼の掌が顔を隠してしまう。
だけど確かに私のまぶたの裏に焼きついた。
「そっか……」
小さく落とされた声は、波紋のように私の心まで広がり、震わせる。
言葉をかけることもできず、私はただ彼の姿を瞳に映していた。