未来の君のために、この恋に終止符を。
安藤くんが、ケーキの最後の一口を放りこんで、コーヒーを口に含んだ。
落ち着いたところで、彼は私を見ている気配がする。
「もう、だんまりはやめとけ。
いいことなんてないだろ」
淡々と、怒っているわけでもない安藤くんの言葉に、なんと返したらいいかわからなくなる。
彼の言うことは、間違いじゃないと自分でもわかっているから。
だからこそ、難しい。
「今回は崇人の言うとおり。
それにわたし、前にも言ったよね?
話したくないことは訊かないから、不安に思わなくていいんだよ」
言えることだけでいい、と背を撫でるめぐみの掌の温度が布越しに伝わる。
それはめぐみとの距離を取ろうとして、取れなくて、苦しんでいたあの頃。
彼女が私に向けた言葉だ。
前と同じなら、また手を伸ばしていいだろうか。
すべては告げられないけど、いいだろうか。
そっと顔をあげて、めぐみ、安藤くんの順に視線を交えた。
「……私が晴樹と付き合っていたら、傷つけるだけなんだ」
言葉を選びながら、ゆっくりと声に乗せる。
どうすれば真実は告げずに私の状況を理解してもらえるのか、考えるんだ。