未来の君のために、この恋に終止符を。
「前に話していた、……実莉の傷のこととは、違うの?」
「違う。それはずっと思っていたから」
もうそれとは規模が違うんだ。
時間や関係、私たちの交際は晴樹のたくさんのものに影響を与えるけど、失うものがあまりにも大きすぎる。
「取り返しのつかないことに、なる」
「そっか」
瞳を伏せた。
まつげの先に、わずかに雫がのったような感覚がする。
だけどきっと、違う。
そんなことが許されるような状況ではない。
「じゃあもう、花沢がしたいこと、最善だと思うことをするしかないんじゃないか?」
まぶたを押しあげる。
安藤くんはカップをソーサーに置いて、静かに私を見据えた。
「だって、取り返しのつかないことだろ?
やれるだけもがくしかない」
小さく息をつめた私に、めぐみは心をほぐすように柔らかく微笑んだ。
「晴樹の気持ちはどう?」
「晴樹の気持ち……」
「うん、そう。
それから実莉が守りたいものはなに?」
心に寄り添うめぐみの姿に胸がぎゅうと締めつけられる。
晴樹の気持ちは、よく知っている。
私のことは幼馴染としてしか想っていない。
だから、関係は断ち切られても大丈夫のはずだ。