未来の君のために、この恋に終止符を。

死なないで、好きだから





目を開けられないような鮮やかな色が空にとけている。

そしてまるで空が降って来るかのような日差しは、繊細でありながら色濃く、世界をかんたんに染めていく。

影が落ちることで、夕日の光はまるで私たちをくり抜いているかのようにはっきりしていた。



私の影に並ぶ、私よりずっと大きい晴樹の影が思わず気になってしまう。

そして、決して私の瞳以外には姿をのぞかせない、未来の晴樹の存在。



今日はとうとう夏休み最終日。

順調に課題を消化していく晴樹と共に過ごしていたことから、ふたりともとっくに終わらせてある。

せっかくだからと遊びに行くことになり、今はそのデート帰りだ。



水族館ですいすいと泳ぐ魚をガラス越しに見つめる。

それだけのはずなのに、水族館という場所はとても不思議だと思う。



海の中に落ちたかのように少し暗い空間、光が呼吸する明るい場所、泡が揺らめく水。

特別な空気を感じて、かんたんに世界はふたりきりになる。



そうやって1日水族館で楽しんだ。

触れあいコーナーやショーを見ていれば、時間なんてあっという間だった。



デートの最中は姿を見せなかった未来の晴樹はいつから待っていたのか、水族館を出たところで空気に紛れるように立っていた。

そうして今、3人で帰り道を歩いている。





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