未来の君のために、この恋に終止符を。




息を呑む音がやけに大きく聞こえた。

触れあわない、だけど手を伸ばせばかんたんに指先がかすめるような距離感で、彼は大きく目を見開いた。



「なに言って……」



困惑が絡みつく声は、震え、揺らぎ、つまっている。

動揺してくれていることがわかって、そのことが嬉しいと思う私は性格が悪い、とわかりきっていたことを再確認した。



そのくせ言葉を取り消すつもりはない。

そのまま説き伏せようと息を深く吸った。



「私は、晴樹にはずっと幸せでいて欲しい。
笑いながら生きて欲しいって思っているの」



私の大切な人。

なにがあっても、ずっとずっと好きだった人。



幼い頃に砂で汚れた手を伸ばされた、あの頃の無邪気な笑顔が忘れられない。

少しずつ大人になっていく君が遠くに行かないか不安で、私を見て欲しかった。

誰より大切にしてほしかった。



誰より大切に、したかった。



図々しくて、笑われてしまってもおかしくないけど、本当に。

本当に願っているんだ。



「それなら、どうして別れようなんて言うの」

「だって、私といたら叶わない。
晴樹は傷つくだけだから」



ふるふると首を横に振り、ぐらつきそうになる気持ちを振り払った。

揺らぐ髪の先から感情を落とす。






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