未来の君のために、この恋に終止符を。
あんなにも鮮やかだった夕日は街に沈んでいき、暗闇にとけていく。
木々は揺れてさわさわと音を立てるけど、いつの間にかもうセミの声は聞こえない。
そんな静かな空間で、私は嘲笑混じりの涙声をこぼした。
「腕の傷を見ては、顔を歪めて後悔しているのに別れたくないなんて、そんなうそはいらない」
左腕をぎゅっと強くつかんだ。
あの日からずっと、ずっと彼はそうだ。
この左腕の傷を見ては苦しんでいる。
晴樹のその表情を見たくなくて私は長袖の下に隠し、そのくせ彼を手放さないためにその傷をそのままにしている。
ばかみたいな私の行動。
だけどそのきっかけは、晴樹だ。
私の心を捕らえて、乱して、もう十分だ。
好きすぎて、辛いから。
「私のことなんて好きじゃないのに、気まぐれに別れないなんて言わないで!」
声がかすれた。
すれ切れた心は熱に触れて消えていくこともできず、空気を支配する。
だけどそれでもやっぱりそれは一瞬のことで、あっという間に晴樹に奪われた。
らしくなく鋭い視線、潤んだ瞳、その奥の温度。
それらが弾けるように、強く強く、言い切られて、わたしは心を抱き寄せられた。
「好きだよ」
砂糖よりもずっと、驚くほど、甘く響いた。