未来の君のために、この恋に終止符を。
「顔を歪めてしまうのは申し訳ないと思うけど、腕の傷を見たら辛い。
大切な人に傷をつけたんだから、いつまで経っても気になるよ」
「晴樹……?」
「あの時から後悔ばっかりしてるし、結局田中への返事はどうするつもりだったのかも知らない」
「はる、き」
「だからせめて田中以上に賢くなって、実莉に勉強を教えられるくらいになった。
実莉の願いならなんだって叶えられるようにした」
「……っ」
「付き合ってって言われたら付き合うよ。
そんなの当然じゃないか、喜んで受け入れるに決まってるじゃないか」
だって俺は、実莉のことが、ずっと好きだったんだから。
晴樹の言葉は切ないほどに優しかった。
名前を呼んでなお吐き出され続けたのは、私が知らなかった彼の真実。
彼から向けられていた、気づかなかった、彼の想い。
どんなに辛くても悲しくても苦しくても、捨てられなかった恋と同じようにこぼせなかった涙は、頬を誤魔化しようもないほど濡らす。
コーヒーに浮かべたクリームのように、ほどける優しさが、晴樹の優しさだけが私の涙腺を緩ませる。
ほたり、ほたり。
伝う雫はこんなにも、こんなにも熱い、恋の熱をはらんでいる。