未来の君のために、この恋に終止符を。
満たされた心を抱えて、晴樹の横顔を視線でそっとなぞる。
触りたくなるような綺麗な黒髪。
爽やかな二重の目元。
微笑んだ時の笑顔は、砂漠に落とされる水滴のように心に恵みを与えてくれる。
そんな彼の、泣きそうな表情を見て、私はベッドに投げ出された手を掴んだ。
彼もなにかしらの感覚があるんだろう、びくりと指先が跳ねて空気がぐるりと動いた。
晴樹は空気の抵抗のようで、実体はない。
彼が現在に来てからずっとそう、他の人と同じ触れ方はできない。
だけどこれが私たちの触れあいだ。
「ひとつ、教えて欲しい」
吐息と共に吐き出すように、彼の返事を待たず話を進める。
「私は、晴樹が好き。
現在の晴樹も私を好きだって」
「……」
「なら、未来の晴樹は?
私の目の前にいる晴樹は、私のこと……好き?」
言葉は宙を踊る。
ひらひら、ふわふわと、晴樹の元に舞い降りた。
表情が不安を示さないように、唇をぎゅっと噛む。
感情を殺して、彼の言葉を待った。
「15の時も、それより前も、22になった今でも、実莉は俺の好きな人だよ」