未来の君のために、この恋に終止符を。
現在の晴樹が未来の晴樹と違って別れることに反対してくれるのは、自分が死ぬ未来を知らないから。
私が付き合わなければよかったと言っていないから。
だけど、それならそのままでいい。
そのままで、私を受け入れていて欲しい。
愛があると言うのなら、私が別れる理由はない。
だって、人と関わることで未来は変えられる。
そして変えるのは自分自身だって教えてくれた。
未来の君と、現在の君が。
だから大丈夫。
信じてるから、勇気を出して。
「未来は変える。
……私が、変える」
歪んでいた恋は、正しいものにして。
哀しい恋には、終止符を打つ。
晴樹みたいにはうまくできない。
人付き合いは苦手だし、口下手だし、またひどいことを言ってしまうこともあるだろう。
だけど君がわざわざ未来から来てくれたこと、たくさんのこと、忘れないから。
晴樹を想う気持ちは変わらないから。
「だからどうか、待っていて」
君のために、今度は私が未来に行くんだ。
緊張した面持ちのまま、私は想いをすべて言葉に託した。
それを受け止めた晴樹は重ねた手を離さないように、それでいて綿毛が飛ぶようなかすかな力で私を甘やかす。
「────うん、待ってる」
それはまるで、呪いがとけた、童話の世界の人。
風がそよぐ、夏の夜。
彼は息するように自然に微笑んだ。
その表情を見て、私も笑みを口元に乗せて、彼の瞳に映ってみせた。