未来の君のために、この恋に終止符を。
身体の関係に進むことのなかった私たち。
それはきっと変えなくても構わない未来だから、私がなにかをすることはない。
未来の私たち、ふたりで決まることだ。
相手が未来の晴樹とは言え、額にキスを済ませてしまったことは現在の晴樹には秘密だ。
でもまぁ、ひとつくらいは、再会までの秘密を増やしたって構わないだろう。
互いに静かな笑みを交わす。
そして力いっぱい、熱い抱擁を交わした。
もう触れることにためらわない私たちは、2年前の幼馴染の距離でも、歪んだ恋人の距離でもない。
ただ好きな人のそばにいる、ただの男女だ。
「またね」
「うん。また」
顔は見なかった。
瞳に焼きつけなくたって、そばには15歳の晴樹がいる。
未来の晴樹のそばには、きっと22歳の私が。
だから、短いその言葉だけでよかった。
腕の中で熱い風がぐるぐると回る。
巻きこまれてしまいそうな勢いに足元が揺らぎそうになった瞬間、空気に戻るように、未来の晴樹は消えた。
君にまた会えるのか不安に思う心は、きっと額に触れた、つたないキスが支えてくれる。
だから現在の晴樹と、私のそばにいてくれる晴樹とたくさん話をしよう。
言葉を尽くして、もう逃げ出さないで、そして私は君のいる未来へ繋がる道を行く。
ふっと息を吐き出して、口角をわずかに上げた。
わずかににじんだ涙がこぼれる前に、指先でぎゅっとぬぐった。