未来の君のために、この恋に終止符を。




ノートの線を睨みつけるように見つめ、ただそれだけに集中する。

そうでもしていないと、なんだか心が溢れてしまいそうな気がした。

それも、涙として。



そんなこと自分に対して許せるはずがなく、必死で気を張っていると、私の横に音もなく足が下ろされる。

影もなく、視界に映るだけのそれに視線を上げた。



「実莉、大丈夫?」



ベッドに腰かけたまま眉をかすかに下げて、向けられた心配そうな瞳には情けない私が映っていた。

それがいやで、せめて目をそらしたいと思う。

なのに彼に惹きつけられていて、どうしてもできない。



深く関われば傷つく。

そんな予感がするのに、それでもやっぱり目を引く存在なんだ。



「実莉……?」



再び名前を呼ばれる。

さっきよりも不安げな声色にゆったりとまばたきをして、ようやく引力を断ち切れたようにわずかに目を見開く。

その動作を恥じて、私はそっと顔を背けた。



「そんなに何回も呼ばなくたって聞こえてる」



淡々と言葉を返した。

それでも内心では動揺していて、うまく隠せているのか少しだけ不安に思う。



未来の晴樹の声は、今の晴樹と大きな違いがないせいで心がざわめく。

私の知らない晴樹みたいで、だけどよく知る晴樹と同じで。






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