未来の君のために、この恋に終止符を。
「ごめん。ただ、昔の俺の説明でわかってるか気になって」
背中に向けられる声は、砂糖とミルクがたっぷりのカフェオレのように私を甘やかす。
明らかにきつい言い方なのに、一言だってそこには触れたりしない。
困った表情のままなんだろうということが視界に入れずともわかり、唇をきゅっと閉じた。
「高1レベルなら俺でも教えられると思うんだけど、どうかな?」
未来の晴樹からしてみれば、ただの親切心。優しさ。思いやり。
ああ、だけど、現在の晴樹と同じように彼は鈍感だ。
私の気持ちに気づかない。
……私が口にしないんだから、当然だけど。
「私には晴樹がいるから、いらない。
あんたの説明なんて聞きたくない」
現在の晴樹の名前を出せば頬を朱に染めて、そのくせさみしそうに唇を噛む。
その矛盾が気にかかるけど、質問なんてできるはずがない。
「そもそも私はあんたが本当に晴樹だって信じきってなんかいないんだから」
確かに晴樹と被る部分は多くある。
似ていると思ったのは1度や2度じゃない。
だけど未来から恋人がやって来るなんて、やっぱりありえない。
……別れさせるために来たなんて、信じたくない。
だから彼の言葉を鵜呑みにするわけがないんだ。