未来の君のために、この恋に終止符を。
「……俺が割った母さんのカップを実莉が割ったことにしてくれた。
実莉を可愛くないって言った同級生を殴った。
1日1本のアイスを黙って2本目をはんぶんこした」
「っ、」
つらつらと並べられるそれは、過去の出来事。
私と晴樹の、ふたりの思い出のこと。
誰かが知っていてもおかしくないこともあるけど、わざわざ誰かに言ったことなんてないそれを口にした、彼に向けて体をひねる。
驚きから見開いた瞳が晴樹をとらえた。
「同じ思い出はあっても、俺のすべての過去が実莉の過去なわけじゃないんだよな……」
ぽつり、とこぼした彼の言葉。
苦いものが胸を覆って、埋め尽くしていく感覚がした。
まるで本当に彼は、晴樹みたいな口ぶりで。仕草で。
彼の表情にやるせない気持ちを煽られた。
ただ黙っていると未来の晴樹は私に向かって手を伸ばした。
それはそっと頭に向かって……風が髪を撫でた。
ぬくもりはないとわかっていたはずなのに、それでもなお驚きは身をついた。
その反応のせいか、それとも彼自身も私と同じように感じたのか、それはわからない。
だけど確かに彼は慄き、すぐさま手を離した。
目をそらす。
触れられない切なさが痛くて、私たちは現在の晴樹が部屋に戻って来るまで、ただ黙りこんでいた。