未来の君のために、この恋に終止符を。
ただ、ひとつ。
気になることといえば、
「なにばかなこと言ってるんだか」
「えー、晴樹ひどい!
こんなのちっともわかんなくない?」
「余計なこと言ってないではやく頭に詰めなって」
晴樹が笑う。
晴樹が頭を叩く。
私には優しいだけの晴樹が、他の女の子に向けては可愛い意地悪を、する。
頭を撫でたり、甘やかす触れ方はあっても、こづいたり頬をつまんだりなんてことは私にはずっとしていない。
昔はされていたそういう行為は2年前にすっかりなくなって、まるで白いノートにこぼし、広がり、浸みてあふれたオレンジジュースのよう。
心に消えない色が残され、胸が弾むことはすっかりなくなった。
あまりにも時間が経ち、関係が変わり、私に向けられていたことを思い出すことさえ難しい。
それほどまでに私は、素の晴樹と接していないんだ。
それが悔しくて、苦しくて。
仮にも彼女なのに、と思うと同時にふたりの関係があくまで〝仮にも〟程度でしかないと実感させられる。
だけどそんなこと、当然だ。
いつでも胸の中にあるのに、目をそらしてしまうだけ。
私たちは、想い合い、付き合いはじめたわけではないんだから。