未来の君のために、この恋に終止符を。
「花沢さん」
出席番号順で試験を受ける決まりになっているから、今日は1番後ろの席に座っているというのに、その後ろから名前を呼ばれる。
机の上にペンケースを出しつつ、振り向くと、そこには、
「おはよう」
いつも私を気にかけてくれている、委員長────片岡 めぐみ(かたおか めぐみ)さんがいた。
委員長なんて面倒な仕事を引き受けるきっちりとした性格で、責任感がありしっかり者。
真面目そうなふたつ結びはいつだってきちんと束ねられた状態で、耳の下で揺れている。
そんな頭の固そうな、友だちが少ないんじゃないかと疑うような見た目に反して、片岡さんはいつもにこにこ笑っている。
誰とでも親しくしていて、明るい人。とてもいい人。
特定の誰かと共に過ごすことはなく、どんな人とも同じ空間にいて違和感を感じさせない。
……唯一、私を除いて。
きっと担任に頼まれているのだろう。
彼女はなにかにつけて私に声をかけていく。
その気遣いにどうしたものかと私はいつだって複雑な心境になるんだ。
だって私なんかに構わないで欲しい。
片岡さんは晴樹と同じで、大勢の人に囲まれている方が似合うから、私のそばになんていていいことなんてなにひとつないから。
それなのに彼女も彼と同じように、私に対する感情を少しも見せず、素気ない対応しか返さなくても懲りずに話しかけてくる。