未来の君のために、この恋に終止符を。
二重の瞳を持つ整った顔立ちに、表情豊かな晴樹はいつもクラスの中心にいるようなタイプ。
ツーブロックショートの黒髪は耳元がすっきりと爽やかな彼に似合っていて、いつも無表情な私とは違う。
幼馴染じゃなかったら下の名前で呼び合うことなんて……ううん、それ以前に話すことさえなかったかもしれない。
友だちなんておらずひとりでいてばかりの今の私とは、それほど遠い存在なんだ。
そんな彼と付き合うようになったのは、2年前。中学2年生の夏から。
あの日は蝉が騒がしく、なにもせずとも汗がにじむほどあつい日だった。
私は嬉しくて、嬉しくて、……悪夢のようだと思った。
あの頃のことは今でも忘れられない呪いのように、胸に染みついている。
────呪い。
それは仮にも好きな人と付き合っている人間の言葉とは思えない。
だけど事実、そうなんだ。
私にとっても……彼にとっても。
きっと晴樹はあの日私との交際を受け入れたことを後悔している。
だけど彼から別れを切り出すことはない。できない。
償いでしかないとわかっていながら解放してあげるつもりなんて欠片もない私のことなんて、本当は嫌いなんだろう。
それなのに付き合わされている晴樹は、可哀想だ。