未来の君のために、この恋に終止符を。
「花沢さんは晴樹の彼女なんだし、いやなら言った方がいいんじゃないかな」
優しい気遣い。
私と晴樹を思っての言葉。
だけど、彼女はわかっていない。
私たちの関係に未来なんてない。
いつだって終わりと隣り合わせで、誰より晴樹の心から遠いのに、言えるわけがない。
そっと静かに瞳を伏せた。
握りこぶしを作るほどの、憤りを感じるほどの気力も、私にはもうない。
「なんて、ね。ごめんね、ふたりのことに勝手に口出しして」
片岡さんは黙りこんだわたしの様子を見て察したのか、自分の発言を軽いものに変える。
えへへと笑う表情に対し、声色は申し訳なさそうに少し沈んでいる。
それに胸の奥が罪悪感で震えた。
それでも、私は彼女に自分の感情をぶつけることなんてしない。できない。
晴樹へ向ける気持ちも、本音も、心も、なにもかも外には出すことは許されないから。
だからただ私は沈黙で彼女の言葉に応えた。
片岡さんが私のそばから去り、先生が教室内に入って来たことでさすがに晴樹の周りからも誰もいなくなる。
そのまま試験がはじまり、シャーペンと紙と机とが擦れる音がする。
それがなんだかやけに耳について、私は文字が紙上で踊る姿を瞳に映していた。